2016年1月19日火曜日

旅はまだ終わらない



まず、みごと再選を果たされた越直美氏には心より「ご当選おめでとうございます」と申し上げます。

    (みなさまからのコメントを再開しました)

大津市長選挙の投票率は前回の44.15%を3.82ポイント上回る47.97%でした(1月18日京都新聞朝刊)。以下に京都新聞で報じられた選挙結果と分析内容を再掲します(コメントは同日京都新聞から転載)。
          得票数 得票率 全有権者比率(富田の試算)          
越 直美氏   54.255  42.07  20.03 
                        民主党支持層の7割、自民党支持層の3割、維新の党食い込み、無党派の半数  
蔦田 恵子氏  45,738  35.47  16.89 
                        自民党支持層の6割、公明党支持層の7割、無党派の2割強
川本 勇氏   18,335  14.22    6.77 
                        政党を問わず浸透せず、無党派の約2割
川内 卓氏   10,631   8.24    3.93 
                        共産党支持層の6割、無党派の1割未満 
合計         128,959 100.00   47.62

・無党派への浸透が当落を大きく左右、
・越氏は南部、東部、志賀地域で40%以上獲得、蔦田氏を10ポイント程度リード、蔦田氏は北部、中部でトップだったが越氏との差は3ポイント程度、
・前回越氏に投票した人の55%が今回も越氏に投票、26%は蔦田氏に、12%は川本氏に投票先を変更、
・前回自民推薦候補に投票した人の71%は蔦田氏に、共産推薦候補に投票した人の59%は今回も川内氏に投票、
・有権者が重視した政策は「市街地活性化・まちづくり」「教育・子育て支援」「景気・雇用」「高齢者福祉」「環境・エネルギー」「行財政改革」と続く、
・「市街化・まちづくり」を重視した人の39.7%が蔦田氏に投票したが、越氏と川本にも票は分散した、
・「教育・子育て支援」は越氏が64.7%の票を集めた、
・「行財政改革」を重視する人からは蔦田氏が44.1%、越氏が37.3%を取り込んだ


以上が京都新聞が報じた選挙結果の分析概要であるが、私はやはり結果としての得票率や、全有権者に対する得票比率に注目したい。
前回より投票率が3.82ポイント上昇したとは言え、まだ投票総数は有権者の半数にもとどかず、つまり過半数の有権者が棄権していること、越氏は相対1位とは言え全有権者に対する得票比率が20.0%程度に過ぎない。現在の選挙制度においては勿論文句なく当選であるからそのことは確認したうえで、ここからは私の私見、希望的選挙制度の改革を考えてみたい。

まず首長選挙での基本的な考え方であるが、ただ一人の選良を選出する選挙であるから、やはり理想的には主権者の過半数の支持を得た人を首長に選びたい。そのためには例えばよく行われる手法として、第一回投票において過半数を得た候補がいない場合は、第二回目として一位と二位の候補者で決戦投票を行って、過半数を制した人を選出する方法がある。

しかしこれでも投票率が低い場合には、全有権者に対して過半数を得た人が誕生するとは限らない。そうすれば必然的に高い投票率が必要となってくる。しかし今日の選挙事情を考慮すれば、いつまでたっても決まらないことが十分に考えられる。ローマ法王の選挙は「コンクラーベ」と呼ばれるが、法王が選出されまでには長時間を要していることがよく見聞される。

理想を追求しても限りある諸資源(お金や時間)の制約があるから、少なくとも二回の選挙で決めることが必須であろうと思う。したがって「全有権者の過半数の支持」の旗は降ろさざるを得ない。

ここからはまた様々に意見が分かれるところであろうと思うが、例えば「投票率70%以上」を基準にすれば、第二回投票の勝者は全有権者の35%の支持を得たことになる。つまり全有権者の1/3以上の支持を得たことになる。
しかしこれでも現状からすれば遠く及ばないことである。ではどれぐらいまで目標値を下げるかであるが、これはもう選挙制度の根幹にかかわることであるから何とも申し上げられないが、私見としてはやはりいくら譲ったとしても全有権者の1/4以上ぐらいの支持で成立する首長であってほしいと思う。

再選を果たした越直美氏は、これからの4年間の市政運営を託された訳であるから、私がこのブログで読者のみなさん、市民の皆さんにお伝えしてきた様々なことをもう一度振り返って頂いて、改めるべきところはしっかりと反省していただきたい。

特に大津市教育委員会との関係においては、大津市の教育行政への過剰な干渉や引き回しは止めて、「レイマンコントロール」の原則に立ち戻って、新しい教育委員会制度の下でしっかりとした賢い関係の構築をはかっていただきたい。

言い過ぎになることを自制しつつ申し上げれば、教育委員会との協議会においてはあまりに細部にわたる些末なことを議題とせず(私の在任中は例えば英語教育の設計に関わって実に多かったが、そして現在はそのようなことがないことを願うが)、大津の子供たちがどのように育ってほしいのか、どう育てていくのかといった大局的な慈愛に満ちた観点で協議し、教育委員と意見をすり合わせて頂きたい。

「着眼大局、着手小局」という言葉があるが、協議会においてはまさに「大津の子供の、あってほしい将来像」をど真ん中にすえて、絶えずその原点に立ち返って協議していただきたい。(ALTを何人採用すべきかなどといった問題が協議会の話題になることなどは論外である)

大局的な観点で教育課題についての基本方針が決まれば、あとは優秀な教育委員会事務局の職員が教育長の強いリーダーシップの下で、具体的な方策を立てることができる。
「そのことを任せきって職員の士気を高め、能力を最大限に発揮させる」ことこそ首長のあるべき姿であろうと思う。そうすれば優秀な職員は必ずや市長と教育委員会の期待に応えて死に物狂いで立派な、具体的な方策を策定することができる。
 「大方針を決める、具体化は任せきる、具体的な事業計画に承認を与える」ことが市長のPDCAであると心得て頂きたいと心から願う。

実は私もトップダウンや「拙速」はマネジメントスタイルとして好きである。しかし上述したPDCAサイクルを踏み外すことは「禁じ手」である。

今回の選挙についても、57.93%の市民が「非 越直美候補」に一票を投じたことを銘記され、「私が民意」などとおっしゃらずに謙虚にご自身の考えとは異なる意見に耳をかたむけられて、合意形成をはかって頂きたいと思います。

さて、最後にもう一つどうしても申し上げなければならないことがある。
越市長がこのことをどれだけ重大なこととして認識されているかは知る由もないが、過去4年間にわたって、特に当時の教育委員長に対してなされた非礼、無礼の数々や職員に対するパワハラまがいの言動は厳しく反省されて、しっかりと謝って頂きたい。ブログの中でも書いたことであるから、もしこのブログを読まれているのであればお気づきのはずである。

私は、「大人と子供の違いは、誤ったことをしたときに謝れるかどうか」が分かれ目であると考えている。振り返れば、越市長は、市議会本会議においての質疑の中でも、議員の質問・追求について、ついぞ謝られたことはなかった。唯一目にしたのは、件の重大な事件について市政の最高責任者として代表者として、教育委員会や学校の不始末をメディアの前で謝罪された事だけである。内部的には教育委員会と学校が悪いの一点張りであった越市長もさすがに全国から集中する抗議の前に謝罪される場面があったが、それ以外のことについての謝罪は少なくとも私は目にしたことがない。

一期目の重大な問題は一期目の任期中にしっかりとけりをつけられて、心新たに二期目の課題に立ち向かっていただきたいと切に願います。市長の言動を、当時の教育委員は全員、これからも固唾をのんで見守っております。

読者の皆さんには、予想をはるかに超えるビュウーアーに恵まれ、このサイトに立ち寄って頂き、賛否両論が交錯する中で実のある議論ができましたこと心より感謝申し上げます。まだまだお伝えしなければならないことは山ほどありますが、それはまたの機会に譲りたいと思います。

引き続き一大津市民として、特に教育行政には強い関心をもって見守り、私が正すべき事態と認識する案件が起きたならば躊躇なく然るべき行動を起こすことも考えております。

ここまでの期間、立ち寄って頂いた多くの皆さんに改めて感謝申し上げます。有難うございます。

2016年1月19日 前大津市教育長 富田 眞























4 件のコメント:

  1. 富田さんの老婆心……というより、猪突猛進の娘を戒める父親のような訓戒に心打たれました。
    越市長の心の琴線に届きますように祈るばかりです。

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  2. お立ち寄り下さって有難うございます。越直美市長と会話をしていた2年半前の市役所での日々を思い出しますと、本当に思春期、反抗期に入った生意気盛りの娘そっくりっで、父を父とも思わずどこかで聞いた聞いてきたようなセリフをこともなげに投げつける娘に手を焼いておりました。並みいる部長連中も同じことで、陰では皆さんげんなりしていました。まさに同志社大学名誉教授で英語教育の権威であられる渡辺武達先生のおっしゃる「Japalish」そのもので、渡辺先生は肯定的に使われているが、政策上の懸案事項で特に市長と大きな争点がない部署を除いては、皆さん同様に頭を抱えていました。教育委員会事務局はまさに懸案事項の争点だらけだったたわけで、市長部局との折衝窓口であった部長は極めてタフな人格者だったからよかったもの、普通の神経では三日と持たないところでした。今も状況は基本的には変わっていないと思いますが、市長には「人事異動」という強力なツールがありますから、コンフリクションは多少は改善されたのかもしれませんね。問題はこのようなことが一切、全く市役所の外からは見えないことで、そのような状況下で今回の選挙が行われたということです。

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  3. 職員です。
    前教育長と前副市長がこのようなブログを立ち上げて下さったことは、ものすごく励みになりました。それぞれができる形でより良い大津市に向けてアプローチしてくださったと感謝しています。
    誰かが何とかしてくれる、ではなくて、今度は自分で、自分達でより良い大津市を目指していきます。今回の選挙で冬の4年がまた始まった、と思いましたが、これからの4年間は鍛える場だと思ってやっていこうと思います。この4年をやり通せたら、今よりずっと力をつけているはず。

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  4. 今回の選挙で、越氏の実体を見抜けない市民が多くいることに失望しました。まだ対立候補者が一本化されていれば、現職当選なかったと思います。対立候補が出れば出るほど、現職有利になってしまうと憂いでいたのですが、やっぱり。

    また公開討論会で、市民との質疑応答のみの討論会があれば、もうちょっと違う結果になったのではないかと。あの公開討論会では、予定シナリオ通りで、新聞で言ってることと同じで、きれいごとだけで、実体は見えません。
    シナリオにない質問に、越氏がどう答えるか、素顔がみられたのに、準備した回答を言うのではなく、想定外の鋭い質問にどう答えられるか、そういう討論会があれば良かったです。

    越氏の人間性・・謝らないのは、厚顔無恥って感じします。自分の意見を頑として譲らない、反対意見を聞き入れない(選挙戦時、新聞には、反対意見の人ととことん論じるとか言い、したたかな人だと思いました)、タクシー不正においても、何にしても、謝らない人ということ自体、日本人マインドではないと思います。日本語の使い方も、聞いていて、何かおかしいぞと感じています。

    他の自治体では命の大切さを伝える一環として良く行われていますが、市内の学校で、事件遺族の講演をさせていず、現市長や、教育委員会の閉鎖性を感じています。

    人情味なく、権力をふりかざしているようでは、今後も問題が起きるでしょう。それがクローズアップされ、異常性が市民に伝わるようになればと願うばかりです。持って生まれた性格というのは、簡単に変わるものではないと思います。
    聞く耳を持てない人では、周囲も疲弊するのは当然ですし、市民の生活実感も市政に生かされません。年齢とかキャリアとか一切関係なく、柔軟性のない独善的な人より、普通の市民感覚を持ったフランクな人に市長になってほしかったです。

    また今後どんな形であれ富田様のブログがあればと期待するものです。

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