2015年12月12日土曜日

当該中学卒業式前のサプライズ

 当該中学校の平成24年度卒業式の挙行は本当に難産だった。事件が起きた当該学年の生徒が卒業を迎えた年度だったから、就任後さして日数の経っていない新任教育長にとっても緊張の連続だった。
 問題をより複雑にしたのは教職員の処分問題だった。卒業式を目前に控えた2月末に当該中学校の前々年度に起こった事件にかかわって、校長以下教頭、学年主任の処分が下った。

 本来、卒業式を控えたこの時期に学校の幹部に処分を下すのはあり得ない事だが、他方で前々年の重篤な事件発生に対して、何もなさずにそのままの校内管理体制で卒業式を迎えることもできないことだった。

 私は卒業式の準備が話し合われている学校協力者会議に出席した。PTA会長はじめ役員の方々、通学区の3自治連合会の役員の方々、更には学校行事に参加された2年生、1年生の保護者や、次年度のPTA役員就任予定の方々などおそらく50人以上の方々が参加されていた。


 議論の焦点はただ一点、卒業証書の署名者が誰になるのかであった。PTA役員の方々は校長はじめ教頭、学年主任の先生方など、事件発生以来ともに大変な時期を乗り越えてきたとの思いが極めて強く、そのためにも当時の校長の署名になる卒業証書がほしいと強く主張された。


 大津市教育委員会事務局を代表して私は「処分が確定した校長の署名になる卒業証書は授与できない、後任の新校長の署名した卒業証書を授与するのが当然である」と申しあげて、議論は平行線、こう着状態が数日間続いた。


 こうした中で県教委による処分は下され、私は当該の校長、教頭らに処分を申し渡した。同時に後任の校長の辞令が発令され、着任したその日に再び大津市教育委員会・当該後任学校長と保護者・協力者との話し合いがもたれた。その時は保護者・協力者側から「もう教育長では埒があかないから、ぜひ市長をこの場に連れてきてほしい」と強く要請されていた。


 私は市長にこのことを伝え、いぶかる市長を説得して同行をもとめ、話し合いの場に臨んだ。話し合いは当然同じ議論の再現となったが、その日はすでに後任の校長が出席しており異様な雰囲気の中で行われた。


 何十分か同様の押し問答のような議論が続いたが、代表者が「こうなったら県教委へ処分の延期を申し入れに行こう」と発言され、そのことについていっとき様々な議論が交わされた。私は「決定された処分の撤回や延期などはありえない」と突っぱねていたところ、突然市長が発言された。「分かりました、わたしも皆さんと一緒に県教委へ処分の延期・見直しを要求しに行きます」


 これには私も、後任校長も市教委の幹部職員もあっけにとられて絶句した。


 なぜなら関係職員の処分をより早くより厳しく主張しておられたのは他ならぬ越市長自身であったからである。


 が、しばらくたって今度は保護者、協力者の中からある学区の自治連合会長が「みんながそう言うなら私も一緒に県へ要請に行く、しかしこれは県に決定を覆してくれとお願いに行くわけだから、我々もそれ相応の決意、覚悟を持って腹を括って行かないといけないが、皆さんにその覚悟があるか」との発言がなされた。


 この発言を境にして議論は一転急速に合意に向かって進みだした。実は私もこの時はすでに腹をくくっていて、今日この場で合意が得られなかったら市教委として「分かりました、今年度の卒業式はそのいっさいを市教委の責任のもとで行います。ご協力が得られないのはやむを得ないがそのように進めます」と宣言するつもりだった。


 最後のギリギリのところで保護者、協力者の皆さんと新体制の下での卒業式にするとの合意に達して、無事立派な卒業式が挙行できた。


 それにつけても心に引っかかるのが土壇場での市長の発言である。2012年7月に起こったことと、この時の市長の発言、翻意にはどこかしら共通する思い、こころの動きがあったように感じるのは私だけだろうか。


(滋賀県のまち風景、2012年当時は彦根市の湖岸にあったレストランです)










3 件のコメント:

  1.  大津市の教育を心配している者です。

     本記事の「市長の発言、翻意」は、その後の(それまでも、でしょうが)越市長の言動に通ずるものがあるのでしょう。

     私は、越市長の市長としての資質について「?」と思っていますが、実際のところはどうなのでしょう?

     本ページで書かれている越市長の「重大なコンプライアンス違反あるいはモラルからの逸脱と思しき言動」、「物事に対する根本的な見方や考え方の違い、情理を尽くすか尽くさないかといったことに由来する生来の大きな違い」、「単なる困難ではない度し難いルールの逸脱、コンプライアンス違反を疑わせる出来事に直面し、独立行政委員会としての教育委員会の正常な業務遂行が困難になったこと」等、教育行政のやり取りの様々な場面での越市長の言動を教えていただけたら、みんなもより判断しすくなると思います。

     本ページの中身を、今後、楽しみにしています。

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  2. 失礼致します。

    本ブログでは、何度も「市長は人の話を聞かない」と書いておりますが、本記事では、市長がPTA役員の意向を汲んだ話であり、富田様の主張と矛盾しております。

    「決定された処分の撤回や延期などはありえない」と突っぱねることは、人の話を聞かない、または人の話を採用しないということであり、市長にも同様の態度を要求することは、富田様は市長に人の話を聞くなと要求をしていることになります。

    両者が異なる主張をしていて市長が一方を採用すると、当然にして他方は「市長は自分の意見を採用しない」ということは言えても、「市長は人の話を聞かない」ということまで言うのは、間違った非難と言えるでしょう。

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    1. 富田氏ではありませんが、多少は事情が分かりますので、少しでもご参考になれば。

      まず、校長に対する厳格かつ迅速な処分を望んだのは越市長自身です。その処分の要望を県に伝えたのも越市長です。したがいまして、PTAの意向と処分の食い違いは、越市長によってもたらされたものです。

      PTAと一緒に行く姿勢を示したところだけを見れば、聞く耳を持っているといえないことはありませんが、実際どうでしょうか。自らが県に要望した処分です。それを取り消してくれと自分の口から言えるものでしょうか。これは体裁の問題ではありません。不要な処分を県に要望したとあれば為政者にあるまじき重大な間違いになります。

      富田氏が聞く耳を持たないというのは、これまたとてつもなく外形だけをとらえた判断です。
      選択の幅が広く、未決定の事柄なら、聞く耳をもつ余地があります。しかし、この場合はそういう状況ではないことをお分かりではないでしょうか。
      決定済みの人事ですから、それを保護者に理解してもらうしかない状況です。理解してもらう過程においては、保護者の言い分に耳を傾けなくてはなりません。しかし、決定取り消しを承諾することはできません。

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